解体工事業とは?

「とび」と聞いてどんな仕事か速やかに回答できる方は限られるかも知れませんが、「解体工事業」であればおよそどんな仕事か想像できるという方は多いのではないでしょうか。
実はこの解体工事業、建設業種では「とび・土工工事業」に今まで含まれていたのですが、平成28年に「とび・土工工事業」から分離・独立し、新たな建設業許可業種の一つとなったのです。
そこでこの記事では、新設の建設業許可業種「解体工事業」について許可取得のポイント等をご紹介して参ります。

そもそも解体工事って?

解体工事はその名の通り、建物の解体に関する工事のことを指します。
ものすごく簡単に考えると建物を壊すだけ、という風にも取れてしまいますが、実際は家屋かビルかによっても解体の方法は異なりますし、内装や塀や基礎、または立木の撤去、廃棄物の処理なども包含されて解体工事と呼ばれる事が多く、その範囲は非常に多岐にわたります。

約44年ぶり!「解体工事業」新設の背景

建設業許可業種において新たな業種が追加されたのは何と44年ぶりです。それだけ建設業許可業種の業種追加は敷居が高かった訳ですが、行政側は「解体工事業の質を高めるため」と説明しています。
この背景を紐解くと、日本の建設需要が新設時代からストックの時代へと移行したことが大きいと言えます。つまり、社会的インフラが充足したことで新しいものを一から造る工事が主体ではなく、スクラップアンドビルドが主体の時代となったことで解体工事に対する社会的需要と重要性や影響度が高まったということです。

例えば社会的影響の一つとして、解体工事増加に伴って増える産業廃棄物があげられます。
産業廃棄物を適切に撤去、処理しなければ不法投棄増大を招くおそれがありますし、ずさんな解体工事が横行すれば、アスベストを飛散させるなどにより周囲へ健康被害を招くことになりかねません。そこで「解体工、解体屋、解体業者」等様々な呼称をされ、法的立場もそれほど明確とは言えなかった解体工事業者さんの法的立場を明確に位置付けると共に、行政的指導や管理を行き渡らすことで解体工事業全般の品質向上を目指したのが、今回の新設理由となった訳です。

解体工事業の建設業許可を取得するためには?

解体工事業の建設業界許可はまだ流動的で明確に断定できない面も一部ありますが、確定領域でのポイントを一言でお伝えするなら「専任技術者要件を満たすこと」です。

「専任技術者」の要件を満たす条件は主に次の3点になります。
1.土木または建築の監理技術者に該当する資格を取得している技術者がいること。2.上記技術者は解体工事業において8年を超える実務経験を有していること3.ただし登録解体工事講習を受講すれば、必要とされる解体工事の実務経験は1年以上
以上の条件を満たした技術者を選任した上で、解体工事登録を事業を行う都道府県に対して申請し、審査にパスすれば解体工事業の建設業許可を取得できます。

この点から解体工事業の許可において国がいかに「人材」を重視しているかがわかりますが、講習を核とした人材教育でどれだけ優秀な人材を作り出せるかは国の手腕にかかっていると言えますね。
尚、経過措置として平成33年5月31日までは「とび・土工工事業」の建設業許可を受けている事業者さんであれば解体工事業の許可は不要です。

要注意点!産業廃棄物の処理

解体工事は建物の解体作業などを通じて建築廃材が出る他、室内残置物や地中障害物など様々な産業廃棄物が生み出します。
これら産業廃棄物の処理は「排出事業者」が最後まで適正に処理する責任を負うことになるのですが、解体工事に伴う産業廃棄物の排出事業者は解体された建物のオーナーではありません。 解体を行った解体工事業さんが排出事業者となる点がポイントです。
解体工事で生じる産業廃棄物は解体という事業行為を通じて生み出されたゴミであり、その事業を行ったのが解体工事業者さんですから排出事業者になる。という考え方によるものです。
そのため、解体工事業者さんは産業廃棄物の種類に応じ、それぞれの法令に即した処理を行うことが重要な使命であり、義務となってくるのです。

解体工事業に関する協会や資格は?

解体工事業に関する全国的な協会組織としてあげられるのが「全国解体工事業団体連合会」です。
その下部組織として各県に協同組合や協会などが設置されていますが、協会に加盟している事業者さんが優良で、それ以外は安心できないといったことは決してありません。
ただ、業界団体に所属している事業者さんの方が業界団体を通じての指導も受ける立場から、より安心度は高いと言って良いでしょう。

次に解体工事業に携わる従事者の方に関わる資格をご紹介しておきましょう。
例えばアスベスト除去を行う場合は「石綿作業主任者」、高層建築物の解体などでは「クレーン運転士」、「玉掛作業者」などが代表的な資格としてあげられます。
解体工事業は資格がなくとも従業員として働けますが、資格があればあるほど仕事の幅が広がり、収入アップにもつながる「職種」、そう考えて頂いて良いでしょう。

(参考)
国土交通省 http://www.mlit.go.jp/
一般社団法人建設業情報管理センター http://www.ciic.or.jp/

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